小麦粉の製造工程:製粉方法がパンの風味に与える影響

米・雑穀・惣菜・弁当・冷凍レトルト・調味料:小麦粉の製造工程:製粉方法がパンの風味に与える影響

小麦粉は、パンをはじめとする様々な食品の基幹となる食材であり、その品質は最終製品の風味に大きく影響します。特に、小麦粉を製造する際の「製粉方法」は、パンの風味を決定づける重要な要素の一つです。ここでは、製粉方法がパンの風味に与える影響について、詳しく解説します。

製粉方法の種類と特徴

小麦粉の製粉方法は、大きく分けて「石臼製粉」と「ローラー製粉(近代製粉)」の二つがあります。それぞれの製粉方法には、独自の特性があり、それが小麦粉の成分構成、ひいてはパンの風味に違いをもたらします。

石臼製粉

石臼製粉は、伝統的な製粉方法であり、二つの石臼の間に小麦を挟み、ゆっくりと回転させることで小麦を挽いていきます。この製法の特徴は、以下の通りです。

  • 低速・低温での製粉: 石臼はゆっくりと回転するため、小麦粉が高温になるのを防ぎます。この低速・低温での製粉は、小麦の風味や栄養価を損ないにくいという利点があります。
  • 胚芽や表皮の混入: 石臼製粉では、小麦の胚芽や表皮(ふすま)が比較的細かく粉砕され、小麦粉に混入しやすい傾向があります。これにより、小麦粉の色がやや濃くなり、香ばしい風味や食物繊維、ミネラルなどの栄養価が増します。

  • 粒子の不均一性: 石臼製粉で得られる小麦粉は、粒子の大きさが均一ではなく、粗い粒子と細かい粒子が混在します。この不均一な粒子構造は、パン生地の吸水性やグルテンの形成に影響を与え、独特の食感を生み出します。

ローラー製粉(近代製粉)

ローラー製粉は、近代的な製粉方法であり、複数のローラーを段階的に通過させることで小麦を挽いていきます。この製法は、効率的で大量生産に適しており、現代の製粉の主流となっています。

  • 高速・高温での製粉: ローラーは高速で回転するため、製粉中に小麦粉の温度が上昇しやすくなります。これにより、小麦本来の風味が若干失われる可能性があります。
  • 胚芽や表皮の分離: ローラー製粉では、小麦の胚芽や表皮を効率的に分離することができます。これにより、胚乳部分のみを精製した、色白で胚芽や表皮の風味が少ない、いわゆる「精白粉」に近い小麦粉が得られます。
  • 粒子の均一性: ローラー製粉で得られる小麦粉は、粒子の大きさが非常に均一です。この均一な粒子構造は、生地の安定性やグルテンの形成をコントロールしやすく、安定した品質のパンを製造するのに適しています。

製粉方法がパンの風味に与える影響

製粉方法の違いは、小麦粉の成分構成を変化させ、それが最終的にパンの風味に顕著な影響を与えます。

石臼製粉によるパンの風味

石臼製粉された小麦粉を使用すると、以下のような風味特性を持つパンができあがります。

  • 香ばしさ: 胚芽や表皮に含まれる油分や風味が残るため、石臼挽き小麦粉のパンは、一般的に香ばしい風味が豊かです。焼成時に立ち昇る香りも格別です。
  • コクと深み: 胚芽や表皮由来の成分が、パンにコクと深みのある味わいを与えます。単調な甘さではなく、複雑で奥行きのある風味が楽しめます。
  • 素朴で自然な味わい: 胚芽や表皮の風味が生かされているため、素材本来の素朴で自然な味わいが際立ちます。
  • 食感: 粒子の不均一性から、パンに独特の噛み応えやザクザクとした食感が出ることがあります。

ローラー製粉によるパンの風味

ローラー製粉された小麦粉を使用すると、以下のような風味特性を持つパンができあがります。

  • 軽やかで繊細な風味: 胚芽や表皮が取り除かれているため、風味が軽やかで繊細になります。小麦本来の甘さや旨味が前面に出やすい傾向があります。
  • クリーミーさ: 均一な粒子構造により、口溶けが良く、クリーミーな食感が出やすくなります。
  • 汎用性の高さ: 風味が穏やかなため、他の材料の風味を邪魔せず、様々なパンのスタイルに適しています。例えば、デニッシュや菓子パンなど、繊細な風味を活かしたいパンに向いています。

その他の影響

製粉方法の違いは、風味だけでなく、パンの製造工程や品質にも影響を与えます。

  • 吸水性: 石臼挽き小麦粉は、胚芽や表皮の微細な粒子が水分を保持しやすいため、吸水性が高い傾向があります。これにより、パンのしっとり感や日持ちに影響を与えることがあります。
  • グルテン形成: 製粉方法によって、小麦粉中のタンパク質の状態や、グルテンの形成力に微妙な違いが生じることがあります。これがパンのボリュームや食感に影響します。
  • 保存性: 胚芽に含まれる油分は酸化しやすいため、石臼挽き小麦粉はローラー製粉の小麦粉に比べて保存性が若干劣る場合があります。

まとめ

小麦粉の製粉方法は、石臼製粉とローラー製粉に大別され、それぞれが小麦粉の成分構成、特に胚芽や表皮の混入度合いに違いをもたらします。石臼製粉された小麦粉は、胚芽や表皮の風味が豊かに残り、香ばしさやコク、素朴な味わいが特徴のパンを生み出します。一方、ローラー製粉された小麦粉は、胚芽や表皮が取り除かれているため、軽やかで繊細な風味、クリーミーさが特徴のパンに適しています。

パン職人は、これらの製粉方法による小麦粉の特性を理解し、目指すパンの風味や食感に合わせて最適な小麦粉を選択します。石臼挽き小麦粉は、その独特の風味から、こだわりのパンやハード系のパンによく用いられ、ローラー製粉された小麦粉は、その汎用性の高さから、幅広い種類のパン作りに活用されています。

米、雑穀、惣菜、弁当、冷凍レトルト、調味料といった様々な食品分野においても、素材の風味や品質を最大限に引き出すための製造工程は重要です。小麦粉の製粉方法がパンの風味に与える影響は、その代表的な例と言えるでしょう。消費者は、これらの違いを理解することで、より自身の好みに合った食品を選ぶことができるようになります。