麺の品質を決める「タンパク質含有量」の測定

麺の品質を決定する「タンパク質含有量」の測定

タンパク質含有量とは

麺の食感、風味、そして栄養価を左右する重要な要素として、タンパク質含有量が挙げられます。特に小麦粉を主原料とする麺類(うどん、パスタ、ラーメンなど)においては、タンパク質、中でもグルテンの含有量が麺の品質に直結します。グルテンは、小麦粉に水を加えて練ることで形成される網目構造であり、この構造が麺に弾力やコシ、そして形状を保つ力を与えます。タンパク質含有量が高いほど、麺はより弾力があり、コシのある食感になります。逆に、タンパク質含有量が低いと、麺は切れやすく、べたつきやすい傾向があります。

タンパク質含有量の測定方法

麺のタンパク質含有量を測定する方法はいくつか存在しますが、一般的に用いられるのは以下の方法です。

ケルダール法

ケルダール法は、食品中の窒素含有量を測定し、それをタンパク質量に換算する方法です。これは、食品中のタンパク質が主に窒素を含んでいるという原理に基づいています。

* 原理
1. 検体(麺)を硫酸とともに加熱分解し、有機窒素をアンモニア(NH3)として遊離させます。
2. 遊離したアンモニアを、塩酸などの酸で吸収させ、アンモニウム塩とします。
3. 生成したアンモニウム塩をアルカリで中和し、遊離したアンモニアを蒸留します。
4. 蒸留によって得られたアンモニアを、過剰の硫酸で吸収させ、生成した硫酸アンモニウムを滴定します。
5. 滴定に要した酸の量から、検体中の窒素量を算出し、これにタンパク質換算係数(通常は5.70または6.25)を乗じてタンパク質量を算出します。

* 特徴
* 古くから行われている標準的な方法であり、比較的精度が高いです。
* 測定には時間がかかり、特殊な器具や試薬が必要です。
* 検体中の非タンパク質性窒素(アミン類、アミド類など)も測定してしまうため、厳密には「タンパク質」の量ではなく「窒素含有量」を測定し、それをタンパク質量とみなすことになります。

デュマ法( Dumas method)

デュマ法は、検体を高温で燃焼させ、生成した窒素酸化物を還元して窒素ガスとし、その量を測定する方法です。

* 原理
1. 検体を高温(900℃以上)で燃焼させ、有機物を分解します。
2. 燃焼によって生成した窒素酸化物を、銅などの還元剤を用いて窒素ガス(N2)に還元します。
3. 生成した窒素ガスを捕集し、その体積または重量を測定します。
4. 測定された窒素量から、タンパク質量を算出します。

* 特徴
* ケルダール法に比べて迅速に測定できます。
* 自動分析装置が普及しており、操作が比較的容易です。
* 非タンパク質性窒素の影響を受けにくいとされています。
* 近年、ケルダール法に代わる標準的な分析法として注目されています。

近赤外分光法(NIR)

近赤外分光法(NIR)は、近赤外線が物質に吸収される特性を利用して、成分を非破壊で迅速に分析する方法です。

* 原理
1. 麺の検体に近赤外線を照射します。
2. 検体中のタンパク質に含まれるアミド結合(-NH-)などの官能基が、特定の波長の近赤外線を吸収します。
3. 吸収された光の量と、あらかじめ作成した検量線(既知のタンパク質含有量を持つ検体で作成したデータ)を比較することで、タンパク質含有量を推定します。

* 特徴
* 非破壊分析が可能であり、検体をそのままの状態(または軽く粉砕する程度)で測定できます。
* 測定時間が非常に短く、迅速な品質管理に適しています。
* 特別な試薬を必要としません。
* ただし、精度の高い分析を行うためには、高精度な装置と、対象となる麺の種類や加工状態に合わせた詳細な検量線の作成が必要です。

タンパク質含有量が麺の品質に与える影響

タンパク質含有量は、麺の様々な品質特性に直接的かつ間接的に影響を与えます。

食感(弾力、コシ、滑らかさ)

前述の通り、タンパク質、特にグルテンは麺の構造形成に不可欠です。タンパク質含有量が高いほど、グルテンの網目構造が強固になり、麺は弾力があり、コシのある食感になります。うどんでは、このコシが重視され、タンパク質含有量が高い品種の小麦が用いられることがあります。一方、パスタでは、デュラム小麦由来のタンパク質が、アルデンテと呼ばれる独特の食感を生み出します。タンパク質含有量が低すぎると、麺は柔らかく、べたついた食感になり、切れやすくなります。

茹で伸び

タンパク質含有量が高い麺は、グルテンの強固な構造により、茹でている間も形状が崩れにくく、茹で伸びしにくい傾向があります。これは、麺が水分を吸収しても、その構造を維持できるためです。茹で伸びしにくい麺は、調理時間の調整がしやすく、また、提供されるまでの時間がある程度長くなっても品質が低下しにくいという利点があります。

風味・うま味

タンパク質は、アミノ酸の集合体であり、加熱調理によってアミノ酸が糖と反応するメイラード反応などを経て、麺特有の風味やうま味を形成する一因となります。タンパク質の種類や含有量によって、これらの風味の質や強さが変化します。

栄養価

タンパク質は、人間の体にとって不可欠な栄養素であり、筋肉や臓器の構成成分となったり、酵素やホルモンの材料となったりします。麺類のタンパク質含有量は、その麺を摂取することによる栄養価に直接影響します。特に、健康志向の高まりとともに、高タンパク質な麺類への関心も高まっています。

加工適性

麺を製造する際の加工適性にも、タンパク質含有量は影響します。例えば、麺生地の練りやすさ、延びやすさ、そして成形性などは、グルテンの形成能力に左右されます。タンパク質含有量が適切でないと、生地が硬すぎたり、逆に柔らかすぎたりして、製造工程で問題が生じることがあります。

タンパク質含有量と麺の種類

麺の種類によって、求められるタンパク質含有量は異なります。

* うどん:一般的に、うどんは中力粉(タンパク質含有量7~9%程度)を主に使用し、適度なコシと滑らかさを両立させます。タンパク質含有量が高すぎると、硬すぎるうどんになることがあります。
* パスタ:パスタは、主にデュラム小麦(タンパク質含有量10~13%程度)を使用します。デュラム小麦はグルテンの質が高く、加熱してもコシが失われにくいため、アルデンテの食感に適しています。
* ラーメン:ラーメンは、麺の種類によってタンパク質含有量が大きく異なります。中華麺(かんすいを使用)は、中力粉~強力粉(タンパク質含有量9~13%程度)を使用し、独特の風味と食感を生み出します。タンパク質含有量が高いほど、コシのある麺になります。
* そうめん、ひやむぎ:これらは、うどんよりも細く、食感も繊細なため、比較的中力粉に近い小麦粉が使われ、タンパク質含有量も中程度です。

まとめ

麺の品質を決定する「タンパク質含有量」は、麺の食感、風味、栄養価、そして加工適性といった多岐にわたる要素に影響を与えます。その測定には、伝統的なケルダール法、迅速なデュマ法、そして非破壊で迅速な近赤外分光法などが用いられます。麺の種類や用途に応じて、最適なタンパク質含有量を持つ原料小麦が選択され、それらが最終的な麺の品質を決定づけています。